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南島町イカ釣り記 11-23
文中敬称略


 まさきがイカ釣りに誘ってくれた。花山魚菜の都合もあり、24日に行きましょうということになっていた。
 それにしてもまったく天気が良かった。いや、前の日もその前の日も、ずっと天気が良かった。11月も終盤になって、コレはもう大変珍しいことなのであった。こんな時に美しい背景の中で釣りが出来、そのうえ美味しい魚が釣れれば、もう言うことは何も無い、幸せ過ぎる状況と言ってよい。

 実は私は弟子とともに前日(23日)に大王崎を訪れていた。休日だったのと、あまりに天気が良かったのでついフラフラと行ってしまった・・・と言ったほうが当たっているかもしれない。あての無いまま昔行ったことのある大王崎をうろついているうちに波切漁港に突き当たった。港では数人が釣りをしていたので話を聞くと、「あっちのほうで墨跡があったよ!」と教えてくれた人がいた。堤防に墨が着いていればそれはもう、そこでイカが釣れたという動かぬ証拠であって・・・場所を見極めるひとつの方法にもなっているのだ。
 薄暗くなり始めた5時ごろ、私は初めて「エギ」というものを糸の先につけ、海に放り投げた。一回、二回、と竿先をしゃくり、しゃくっては巻く。そして3回目。ググッ!!とした重みが伝わり、その後グイグイと引き始めた。なんとドラグも音を出す。私は一瞬、魚が掛かったと思ったくらいだ。ゆっくり慎重に巻き上げてくると、思っていたよりも大きな、紛れもないイカが・・・エギにくっついている。横にいたおっさんと名古屋から来た釣り人がすっ飛んできて、「うわ〜こんなのが釣れるのか・・・」と興奮している。私も興奮していた。何せ初めてのことだ。おっさんは最初私の仕掛けを見て、「それで釣れりゃまぐれだよ・・・」ぐらいのことを言ってたのだ。見たか!

 コレがエギというヤツだ。餌木と書く。昔から漁師が使っていたが、最近は一般の釣り人も使うので細部まで大変よく出来ている。もちろんコレもルアーの一種には違いない。ルアーを見ていて思うが、よく出来たルアーに釣られているのは魚ではなく、どちらかと言うと人間のほうだ。私なんぞ釣具屋に行くたびに買い込み、今や一生分あるのではないかと思うくらいの量をもてあましている。ハハハ。
 下はその後弟子の釣ったアオリイカである。コレで500グラム。私の最初のアオリイカは800グラムであった。この時期としては大きいほうであろう。

 そんなわけで、我々は初めてのイカを釣って、ご機嫌であった。アオリイカは刺身にしても美味しく、高級なイカである。魚も面白いが、イカの手ごたえもそれはそれでけっこう面白く、味がある。もう一匹を追加して、我々はまさきの住んでいる伊勢市に向かった。明日はコウイカの釣れる場所に私と魚菜を案内してくれる予定である。私たちはまだ、この時はコウイカとアオリイカの区別もはっきりついていなかった。分からぬまま、我々は車の中で「よし、明日はコウイカだ!」と気勢を上げていた。

 朝7時に勢田川近くのまさきの家に到着。魚菜とまさきを乗せ、一路南島町に進路をとる。天気は上々、暑いくらいだ。途中車一台がやっとという狭い道を通り抜け、8時ごろ現地到着。上の写真がそうである。折りしも干潮で底が透けて見える。本当にこんなところで釣れるのだろうか・・・。普通ならちょっと竿を出すのをためらうほどの小場所である。写真の小堤防の上から釣るのだとまさきが言う。しかしさすがに4人一緒では狭いので、私はウエーダーを履き、岸から立ちこんで釣ることにした。
 そのうち堤防の辺りで声がして、まさきが弟子のいる方向にタモを持って走っているのが見えた。そして「ヤッタ、ヤッタ!!」と声がしているので行ってみると、立派なコウイカがタモに収まっているではないか。なんでも、弟子が釣り上げたイカが目の前で逃げ、それをまさきがタモですくったと言う。

 これがコウイカで、吐く墨が夥しいため、スミイカとも呼ばれている。コウイカの背中の甲羅は石のように硬い。アオリイカのそれと比べるとはっきり違いが分かるだろう。上がコウイカで下がアオリイカだ。
 

 次に魚菜が釣り上げ、まさきも一杯釣った。まさきは「一匹釣ったからメッキやろ〜」と竿と仕掛けを変え、あっちに行ってしまった。私もウェーディングに戻り、エギを投げ続けていると、やっと竿がしなり、掛かってきた。やれやれ、これで全員、ボーズは免れたわけだ。
 一匹釣れたので、私もルアーに切り替えた。イカ釣りは、これはこれで面白いが、ルアー釣りと比べるとスローテンポである。つまり、やや、退屈な釣りなのである。そしてミノー(小魚に似せたルアー)を投げ続けていると、突如ググッ!と当たりがあり、寄せてみるとなんとアオリイカであった。ほ〜、ルアーでも連れるんだ〜。天気は最高、風もなく、ベタ凪の海で真昼間に魚釣り・・・みんなニコニコである。
 

 私の釣ったアオリイカと、まさきの釣ったヒラセイゴ、メッキである。まさきは、さすがである。イカはともかく、魚はちょっと無理だろうと思っていたが、たとえ一匹でも本命のメッキを釣るところが、さすが・・・なのである。ヒラセイゴはシーバスアングラーの憧れと言っていい魚で、普通のセイゴより体高が高く、かっこいい魚である。カッコいいばかりじゃなく、平たい分だけ引きも強いと言う。・・・いつか釣りたい魚である。それを3連発でまさきは釣り上げた。私の目の前で・・・。私も一度ヒットしたが、残念、バレてしまった。
 魚菜が堤防の隅でゴソゴソやっているので何かと思ったら、ガンガゼというウニの一種を潰している。そういえばHPでガンガゼを食ってみたいとい書いていた。魚菜は、変わったものさえ食っていれば幸せ・・・という人間である。もちろん変人の部類である。冬になったらイタドリ虫を食うらしい。
 ガンガゼは少しずつ全員が味見をした。まぁ、ウニはウニなのであるが、なんとなく生臭い。美味と言う味ではなかったが、弟子だけが「美味しい!」といって私の分まで食べた。少々恥ずかしかった。

 さて、昼まで釣って、場所を変えた。青物(ハマチ、カンパチなど)が釣れるかもしれないというので、場所を変えたわけである。


こんなところで釣るのはとっても気持ちいいんですよ・・・
GYOSAI & MASAK

 青物のヒットは無かったが、それは望むほうが贅沢というものだ。こんな状況で釣りが出来ただけでも幸せだと思わなければ。我々は非常に満足して、岐路に着いた。