ハイナン島のインクとヨーコたん


 暮れも押し詰まった12月17日に私はインクに電話をした

 「どう?29日出発のハイナン島に行かない?」

 「え、どこよ、そのハイナン島って・・・」

 「中国最南端の島で、ハワイみたいなとこらしいよ!」

 と答えると、なにやらぼそぼそと相談する声が聞こえて

 「カーちゃんが行くって言ってるから、行くよ!」

と明快な返事が帰ってきた。一見おしとやかに見えるヨーコたんはけっこうテキパキしていて、なおかつノリの良い女性である。こういう時の決断は早く、その上こういうことに関してインクはカーちゃんの言いなりだから、こんな具合にすぐにハイナン島行きが決まったのである。

 それまで今年の年末年始は東京周辺でインク夫婦とsonetaとでゆっくり温泉でも行こうかという話になっていた。しかしそれ以前に(11月中旬)私は今年はHISが主催する名古屋空港チャーター便のハイナン島に行こうか・・・と思っていたのだが、ハワイに行ったばかりだし、え?どうする?・・・ま、やめとく?・・・って感じでズルズルと来ていたのだ 。ところが17日にネットを何気なく見ていると、11月に計画していた同じツアーがまだ募集をしていて、おまけに出発日が近づいたせいか、叩き売りで3万円も値引きしているではないか!。そこでふと思いつき、この暇人カップルを誘ったのである。彼らが行くと言えば、我々も「 よし、行くぞ!」という気になる。今年は不況の影響で全席が売れなかったようだ。いつもだとこの時期、年末年始の海外旅行は売り切れていることが多い。

 

 即決したのはいいが、良く考えたらインクは埼玉で、ツアーは名古屋空港発だ。当日は新幹線で名古屋まで来てもらった・・・。少し早めに到着したのでインクとヨーコたんを息子の運転で大須に案内する。名古屋は案内するところがなかなか無くて困るが、この大須はけっこう面白い街だと思う。左の写真は大須観音で、中国ではありません。右の写真がセントレアのターミナルの電飾。不況でパリ便もなくなってしまったが、来年こそは景気が良くなって欲しい・・・との願いを込めている?。夜の8時半出発が、遅れて9時半になった。ハイナン島着が2時半、中国の時差は1時間である。到着してすぐにホテルに入り、とりあえず寝る。ホテルはマンダリン、オリエンタルリゾートで申し込んであった。


12/30

 インクの部屋からの眺めである。9時ごろ起きて朝食に向かう時、ヨーコたんが「マックさん(誘ってくれて)ありがとう!、もう最高の気分!」と喜んでくれた。いや、実際この眺めだけでも価値があるよね。この時期気温は夜が20度ほど、日中が29度まで上がるが、日陰に入ると涼しく、サラッとした海洋性の気候だ。天気が良いのは(私の場合)いつものことだ。

 朝食後、現地のツアーデスクで行動の相談をする。今日はゆっくりするつもりだ。のんびりと海辺で過ごして、夕食は美味しいものを食べに行こう・・・そしてヨーコたんとじょしゅが1万円以上もするエステに行くと言うので、仕方なく私はインクと近くの5000円の全身マッサージを頼んだ。ま、2時間なので日本と比べれば安いと言えば安いのだが・・・初日はこんな計画だ。明日31日は南田(ナンテン)温泉と熱帯雨林の散策がセットになったオプションツアーを申し込む。そのあと年越しのカウントダウンパーティーがあるので、明日はけっこう長い一日になりそうだ。

 ホテルは数キロメートルのビーチ沿いに建てられた広大なもので、電動バギーで荷物や人を運んでくれる。従ってビーチはホテル専用のプライベートビーチとなっている。我々はまず、周辺を探索し、潜れそうな岩場を見て歩いたが、たいした場所は無かったし、監視員に聞くと決められた場所以外では泳いではいけないと言う。泳ぐなら広大なプールがあるのでそこのほうが安全なのだろうが、 アウトドアやくざで密漁好きのインクがそれで満足するわけは無いし、ダメだといわれるとよけい潜りたくなるのも人情である。

 

 日差しは強いが蒸し暑くなく、快適な気候である。ベストシーズンなのだろう。中国の最南端、西はベトナムで東はフィリッピンだ。ところでヨーコたんは夏に数キロ痩せたらしく、スリムになっていたのに対してじょしゅは、どう見ても本人の申告以上に見える。今夜のエステの効果を期待したいところだ。

 

 

 と言うわけで、区域外で密漁・・・スタイルでシュノーケリング。水は少し濁っているが、潜ってみると岩はほとんどが珊瑚。ただし死滅した珊瑚だ。その上にわずかに生きている珊瑚も見える。小さいサザエも居るが「南方サザエ」で、蓋がツルリとしてるんだよ・・・とインクが教えてくれた (なんでそんなこと知ってんの?)。小一時間岩場で遊んでいると、遠くでピーッと監視員が笛を吹いて、岸に上がれと手招きしている。最初から見ているはずだが、「もういい加減にしたら?」ってとこかな?。

 

  その後はのんびりとビーチで過ごす。突然やってきた夏に、もちろん日本で止めていたビールが復活する。こんなところで他愛の無い話をしながら飲むビールこそが最高なのである。11時ごろから泳ぎ始め、2時過ぎまで砂浜で過ごし、その後軽くレストランで 軽食を摘み、4時ごろまで海辺でブラブラしていたが、本当にこんなのんびりした気分で過ごしたことはいまだかつて無かったような気がする。それはやはりこのハイナン島の気候と景色のおかげだろう。そういう意味でここは別天地という言葉がピッタリだ。

 

 さて夕食は「島なんだから海鮮でしょう!」ってわけで ツアーデスクで海鮮料理に案内してもらう。 薄味で素材も良く、けっこう美味しい。美味しいが我々では全部食べきれない。自分たちでレストランに入って頼んだわけではないので、次々と一通りのコース料理が出てくる。勿体無いとは思うが、結局半分くらい食べ残す。足代と案内料も含めて一人6000円のコースだが、この地の平均月収が2〜3万円らしいから、けっこういい値段である。日本で食べる値段を取られている勘定だ。

 食事後、じょしゅとヨーコたんはエステ、私とインクは2時間の全身マッサージ・・・店も違う。出てきた二人のマッサージ嬢がずいぶん若かったので、インクはなにを勘違いしたのか「ほら、マックさんに可愛いほうを譲ったからね・・・」などと意味不明の発言。さらに「本当のマッサージならもっと熟練したオバハンが出てくるはずだから、隣に個室があるんじゃないの?」とかうるさいことこの上ない。幸い我々の会話は相手に全く理解されていないからいいようなものの・・・中国では確か売春は無いはずだよ、と言っても「いや、絶対にあるって!」と譲らない。やがてこの店がどうやら本当の足つぼマッサージしかしないことが分かってからは少し大人しくなったが、それでも通じない日本語で二人に強引に話しかけ、分かったような分からないような中途半端な意思疎通を楽しむところはさすがである。インクの場合日本語同士でも意味不明のことが多いから、それが外国語になっても同じなのだろう。

 9時過ぎにホテルに帰り、まだ早いので私たちの部屋で談笑。ここでも酒が一滴しか飲めないインクが酒談義を始めるものだから大笑い、まさに談笑である。昔一滴だけ飲んだことのある貴腐ワインこそが「甘くて最高の」酒だと信じるインク・・・これがインクの酒に対する全ての思考の原点となっていることだけは理解できた。なんだか馬鹿馬鹿しくなって寝たのが12時ごろだったっけ?。


12/31

 

 これがナンテン温泉のフィッシュセラピー・・・この得体の知れない小魚が、プールに入った人たちの足をつつき回り、角質を取ってくれる・・・と言う意味でのセラピーなのだ。最初は大変くすぐったいし、不思議なことに魚のほとんどが足に寄ってくる。たまに手に寄ってくるが、95%の魚が足で、それも足を浮かす踵にくっ付いてくるのだ。確かに角質を食べているから、角質の多い部分を選んでいるのだろうか。インクの足にはあまり寄ってこなかったが、これはインクの足が臭いからだろう。

 そのほかにもいくつかの温泉があり、熱いのや温いの、コーヒー風呂やお茶風呂・・・いろんな温泉が楽しめるようになったけっこう広い温泉施設、 玄関に書いてある料金は200元(3,000円くらい)だから自国の富裕層と海外からの観光客相手の施設なのだろう。ハイナン島に訪れる外国人は主にロシア、韓国、そして日本が殆どらしい。欧米系 はあまり居ない。だからホテル以外は英語が全く通じない。 といって私の中国語は「シェーシェー」と昔マージャンで覚えた1〜10までの数だけである。これにしたって発音が微妙に違う・・・つまり全くのお手上げ状態だ。逆に看板などは漢字なので却って分かることが多い。

 

 温泉の後熱帯雨林散策となったが、ちょっとおかしいでしょ?。普通は山道を歩いて汗を流してから温泉に行くというのが常道だよね。実はこの日のツアーも最初はそういう行程で組まれていたのだが、バスが出発してから変更になったのだ。理由が奮っている。ガイドが言うには「(中国政府の)大変偉い人が視察に訪れるから(熱帯雨林に向かう道が)午前中通行規制になり、行けなくなりました」だとさ!。こういうことがけっこうあるらしい。当日までそれが一般に公開されないのが中国政府のやり方らしい。で、突然通行止めになって一般市民があたふたするのである。

 

 これガジュマルの木ですよ。根っこが岩を抱き、割れ目に食い込み、とてつもない景観を呈している。そして下の左が私とヨーコたんのツーショット。こんな写真はやきもち焼きのインクの前では今まで撮れたためしがないが、インクがちょっと油断してむこうを向いた時を狙ってサッと撮った貴重なものだ。下の右の草が水を蓄えている草で、のどが乾くと1本切り取り、そこに溜まっている水を飲むんだそうだ。

  

 バナナとゴムとパパイヤの木。バナナの下にぶら下がっているのがバナナの花(つぼみ)、その花が終わるとそこにバナナが出来る・・・だから何段も重なって実がなるのだ。果物は年中実をつけていて、確かに食うには困らない。だから熱帯は北国の国々と比べるとのんびりしてしまうし 機械文明も育ちにくいのだろう。

 2時間近く歩くが、きれいに整備された木道があるので全く疲れない。キノコや山菜が無いかと探したが、これも無かった。ちょっと整備されすぎだとも感じたが、所詮外国人に見せる場所はこんなものだろう。でっかい木の股で記念撮影。

 

 朝知ったのだが、このツアーには夕食も付いていた。なんでも三亜(サンヤ)市で一番美味しい店らしいが同じようなものを昨夜も食べたので少し食傷気味。今日の昼ごはんも現地の中華だ。確かに美味しいのだが、所詮中華料理であり、基本的な調味料が同じということもあって、飽きてくるのだ。そしてその後連れて行かれたのが、なんと昨日インクと一緒に行ったマッサージ店。そこで一時間の足つぼマッサージを受ける・・・ううむ、ダブったぞ、これは・・・。ま、ツーリストにしてみれば「熱帯雨林を散策し、温泉に入り、豪華な食事を食べ、最後にマッサージで疲れをほぐす」というフルコースセットを企画しているわけだ。これで一人12000円也は日本だと安いのかもね。

 

 そしてHISが企画したカウントダウンパーティーが10時からマリオットホテルで開催された。無料の飲み物やツマミがテーブル席に用意され、まずは舞台で変面(中国に行くと必ずといっていいほどやるね)、全くチンケで笑ってしまうようなマジックショー、 少林寺拳法、千手観音みたいな踊り(これが一番良かった)、フラダンス(と紹介していたが実際はフラではなくポリネシアンダンス)などが2時間ほど続き、いよいよカウントダウンとなった。そして0時 になった途端、目の前の砂浜で花火がと打ち上げられた。でっかいのからスターマインまで、20分近くも延々と打ち上げられる花火を見ていると何故か心が高揚した。人間とは面白いことを考えるものだ。そういえば中国って花火は得意だよね。そして最後に抽選会。入場の時に渡された抽選券のNO.が500番、 見ただけでなんとなく当たりにくそうな番号。今夜は総勢700名を越える人々が参加している。1等はこのマリオットホテルのスイートに3泊という商品だ。結果は、確か406番の車椅子のおばあさんが3等だかに当たり、最後の一等はなんとその車椅子を押していた407番の家族の男性に当たるという凄い結果になってしまった。ホテルには1時半ごろ到着し、すぐに寝る。


2010/01/01 あけましておめでとうございます!

 今日はゆっくりと起き、ゆっくりと朝食を取り、11時ごろから元旦で賑わう三亜の街に繰り出した。観光旅行もいいが、人々の生活が良く分かる街の散歩も面白いものだ。インクもヨーコたんももともと買い物好きなのでスーパーマーケットに行ってみようということになり、ホテルの用意した白タクで三亜一の繁華街に出かけた。

 

 この見るからに怪しげなスタイルで写真とビデオを撮りながら歩き回るインク・・・途中で店の店員に撮るなと怒られ、2階に上がる時に警備員に捕まり、バッグの中身を点検された・・・つまり警備員には万引き犯だと思われたということだ。 この姿では中国でなくても捕まるかもよ。私も以前オーストラリアのスーパーで写真を注意されたことがある。あ、そういえば青森のスーパーでも注意されたことがある・・・つまりスーパーなどは値段が勝負なので、あまりモロに写真を撮り歩いていると店側も気になるのだろう。

 

 

 街の風景。近郊の農家が果物やら雑貨をリヤカーやバイクで運んできて露天で並べて売っている。多くの人が歩いている歩道のはずなのに車が堂々と入り込んできてクラクションを鳴らす。この輪タクみたいなヤツは歩道も車道も関係なくコソコソ走り回っているし、バイクも3人乗りは当たり前、4人乗りしている人もいる。とにかく中国は車優先社会だ。以前行った山間部と比べると道に痰を吐いたりするヤツはほとんどいないが、交通マナーはひどいものだ。

 

 街を歩くと、中国の元気が伝わってくる。本当に昔の日本もこんな風だった。国民性の違いはあるにせよなんとなく懐かしい気がするのである。ただし、売っているものは全く買う気の起こらないものばかり・・・果物も南国だから旨いのかと思ったが対して旨くない。 ホテルの朝食でも並べてあったが、第一甘くないのである。「果物が楽しみだ・・・」と期待してきたインクにとってはとんだ誤算だった。

 

 昼はマックだぜー!。中華料理に飽き飽きしていた我々には救いの神。右のお好みとクレープを混ぜたような料理・・・ちょっと食ってみようかな?と思ったのはこれだけでした。他の店と比べると清潔そうだったからだ。食べなかったけどね。

 

 ちょっと見えにくいけどメーカー名が「HONTO」とある。「HONDA」ではない。ホント?(笑)・・・てっきりスズキのGSかと思っていたら車名が違ったり・・・多分日本車が高いからとは思うが、ほとんどのバイクが125ccまでのものが多く、ごくごくたまに250cc。助手がハンドルを握っている電気バイクも多いし、たいていが原付バイクだ。ハーレーは一台も見なかった。

 それにしても今日もけっこう歩いた。私は腰が少し痛くなり、インクは疲れ果てて「タクシーに乗ろうよ!」と弱音を吐く。元気なのはこの女性二人である。男は、この歳になると目をそむけて無視できないある事実に気がつく・・・かつてはか弱く、護ってやらなければならないと信じていた女性というものが・・・実は男よりも強靭で精神力も強く、しぶとい生き物だったという事実。そして長い間自分が主であると思い込んでいた立場が、気がつくといつしか「オカーちゃ〜ん!」と自分が後を追っているという無様な事実。写真のインクの顔を眺めているとなんだかそんな気がします。言っときますが私は違いますよ。私は亭主関白ですよ、今でもね。ただ喧嘩をするとこのじょしゅの太い腕でヤラレてしまうだけです・・・。

 

 帰りに「自分たちの力で食事をしよう!」ということになり、生簀の海鮮料理屋に入る。日本語をしゃべる客引きみたいな化粧の濃い女につられて、そこでカニやら貝やらを注文していざ勘定を払おうとすると640元!・・・。これはヤラレたなぁ・・・私のカンでは300元がいいところ、それでも高いと思っていた。その時にはその化粧の濃い客引き女は姿を消していた。こういうことがあるから言葉って大事だよな。完全な力不足・・・でも文句を言うほどの金額でもないので払って出る。右の麺はなんて言うのか、丸めた麺を包丁でポンポン削って茹でたヤツ(分かりにくい説明だ)。まぁ美味しかった。日本でも南に行くほど味付けが薄くなる傾向があるが、やはりその法則は生きていた。スープなどは本当にアッサリしている。

 ホテルまで歩くつもりだったが雨が降ってきたのでちょうど通りかかったタクシーを拾って帰る。風呂に入って明日の帰る用意をしていると、インクが「一杯やりにきたよ」と大真面目な顔で部屋のドアを叩き入ってきた。そして私のウイスキーを2ミリリットルほどコップに入れて舐め、「まず〜い・・・」と言って帰っていった。最後の最後までよく分からない人物である。


01/02

 帰りは偏西風の影響か、3時間半ほどで日本に着いた。日本の夕方の気温は4℃・・・実に25度ほどの温度差がある。大晦日から正月にかけて雪がたくさん降ったそうだ。セントレアで、お目当てのまるは食堂は満員で並んでいたので(行きもそうだった)、名古屋のあんかけスパゲティーを食べた。4人とも中華料理以外ならなんでも良かったのである。ヨーコたん、付き合ってくれてありがとうございました!。今度あんかけスパの美味しいソース送るね。インクは4日から北海道・・・恒例の鹿打ちに行くそうだ。根っからの狩猟民族だね。


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