日本列島食歩記@

横浜・博多編


横浜中華街 090315-16

 横浜で開催されたボートショー。その室内会場でなぜかワインを試飲し、購入。この数十年来、釣りや山菜、きのこ、バイクにボートと、そのほとんど をアウトドアの世界に身を浸して暮らしてきた私であるが、ここ数年は少し様子が違ってきている。簡単に言うと、今までは狩猟、捕獲、採取、栽培・・・一次産業的な趣味に惹かれていたのが、最近はそれらを使っての調理、つまり食という人間の工夫に興味が移ってきたのである。ワインひとつとっても、材料のブドウから醗酵、醸造、保管(寝かし)という工程を経た上で、やっとあの馥郁たる酒が出来上がってくるわけだが、その歴史はまさに人間の工夫、試行錯誤の歴史である。料理もしかり。ましてや人種、気候風土の違う世界中のさまざまな料理はこれこそ人間史、人類史ではないか。・・・こんなことにあらためて気付く。単に食欲、美食欲を満たすだけでなく、そこに至った歴史や工程の経緯も含めて味わうこと、これは相当な贅沢であるぞと気付いたわけである。

 ここで2種類、1ダースのワインを買い、ついでに中華街情報を仕入れる。曰く、有名大規模店と小型店に分かれていて、観光客は結局有名店に流れるが、実際私たちが行くのはそれぞれ料理に特徴のある小さな店が多いですね。「山東」という料理店、ここの餃子は旨いですよ・・・フムフム、大いに参考になった。

 神戸もそうだが、昔からの港町は異国情緒があふれていて楽しい。土曜日とあってものすごい人出である。行列のできている店もできていない店もあるが、並んでいる人たちのどれほどが味を知っていて並んでいるのかは不明。と言って見ただけでは…味は分からない。TVに出たとか、なんとかチャンピオンになったとかいう店は案外にハズレということも多い。TVとか大会とかで作る気合の入れ方が実際の営業現場では違うのかもしれない。

 探し歩いてやっと見つけた山東。食事には早い時間であったが、テーブルはひとつしか空いていなかった。写真右に写っている水餃子がめっぽう旨い。他の料理も旨いが、この水餃子は群を抜いている。3人でこれだけ食い、私はビールも飲んで、店を出る。ボート会場で(私がやめておけと言ったにも拘らず)じょしゅが買った 旨くもない肉まんが完全に裏目となり、あまりたくさん食べられない。しかし最低もう一軒は回らないと来た意味もない。

  店外のメニューを覗き込みながら徘徊し、やっと入ったのが、梅蘭。独特の焼きそばが有名な店だと後で知ったが、女店員の仏頂面が思い出に残る。せめてもう少し笑ってくれていたら、味も良くなるのにね。写真では分からないが、この中に餡が入っています。 一緒に食べたえび餃子は平均点。その後夕刻の山下公園でこんなことやって遊びました。



博多中州屋台街 090613-15

 前日の夜、ふとどこか遠くに行きたくなった。こんな時はまずネットで宿を予約してしまう。そうすると気持ちが固まるのだ。で、当日朝に新幹線で出発。9時20分に名古屋駅出発で12時40分博多着。早っ!。少し話が違うが、新幹線の「のぞみ」の停車駅は名古屋→京都→大阪→神戸→岡山→福山→広島→門司→博多となっているが、この中で明らかにおかしいのが福山。下関に止まらずになぜ岡山に至近のココに止まらなければならないのかがさっぱり分からない。

 のんびり歩いて博多駅から中洲に向かう途中にある川端通り商店街。ここで昼食となる。海の近くなので海鮮丼。左は私の食ったヤリイカ丼(私はイカが好きなのである)。同じ丼でも寿司飯に乗っけてあるものより温かいご飯に刺身の乗っているものが好きである。

 

 ホテルは中洲周辺が取れず、薬院の近くだったが地理を確かめるために中洲経由で歩く。ホテルについて少し休憩し、夕刻再び町に出る。最近出来た商業施設に寄ると、ボーカルグループが生で歌っていたので聴く。博多は昔から音楽が盛んなところだと聞いたことがある。いいなぁ・・・。もう一度生まれ変わったら今度こそ一生懸命頑張って音楽をやろう。ピアノも小さいころから頑張って練習しよう・・・。人生は気が付いた時には「もう遅い」ってことが多々あるよなぁ。

 昼間は無かった中洲の屋台がもうずらりと並んでいる。毎日毎日終業したら畳んで、夕方に組み立てるのだが、大変ですね。あらかじめネットで調べておいた中で、有名な「一竜」の前にきたらちょうど席が空いたので座る。ここも満員の店とガラガラの店がある。空いた店では呼び込みの声を上げ、満員の店では「すみません、そこ、ちょっと詰めてもらえます?」とやっている。面白いものだ。しかしこれは時間の問題でもあると後で分かった。9時過ぎに再び通ると、土曜日ということもあって、どこも満員盛況であった。ただし人気店の前はズラリと行列だが。

 ここではドテとおでんとビール・・・ここでやめて次に行くべきだったが、周りの客のほとんどが皆ラーメン、ラーメン、と注文するので・・・二人で一杯食うか?と注文してしまった。ここらあたりが食い歩きの難しいところで、少しずついろんな味を楽しもうとして も、もうすぐ還暦の胃袋が多量を受け付けないのである。ましてや写真の通り、もともと屋台の量は半端ではない。

  

 食べた直後にやはり後悔した。もちろん本場トンコツラーメンはサッパリした中に上質のコクがあり旨かったのではあるが、いかんせん腹が膨れてしまったのである。こうなったら歩いて腹を減らすしかない!。

 中洲の美しい夜景。その美しい中洲の端から端まで我々は歩き、途中串焼きをつまみ、鶏皮の塩ダレの旨さや豚肉の上質な甘さに感動した。九州は鶏肉と豚肉は美味しいですね。街でじょしゅはまたも半額セールにやられて安い服を買った。じょしゅはいわゆる「半額セール」に極端に弱い。絵に描いたように、面白いように引っ掛かるのである。実際払う値段は関係が無い。つまり「半額」という文字を買っているようなものだ。そしてその証拠に、下の写真の、テナーサックスの演奏を聴いていた場所に半額で買った服をあっさり置き忘れている。 じょしゅの置き忘れはしょっちゅうで、別にいまさら驚くことはないが。

 「ずっと修行中!」とダンボールに書かれた横にボウルが置いてあって、そこに聴いた人がお金を入れるようになっている。河のほとりで、なんだか明宝村のクマさんに似た風貌のオヤジが懐かしい曲をカラオケをバックに次々に演奏している。明るい夜空に響くダイアナやらアンチェインドメロディーやらを聴きながらしばし時を忘れたのである。

 ホテルを出る時から目をつけていた店に最後に寄る。この写真には無いが、添え野菜の生キャベツにかかっていた唐辛子酢がインパクトと新鮮さを感じさせてくれた。それぞれの店がそれぞれの工夫をして生き残っている姿はなかなか良いものである。最近、目をつけた店がアタリであることが多い。居酒屋を見る私の目が肥えてきたからに違いない。


 翌日はレンタカーを借りて佐世保へ。じょしゅの要望で潰れかけているハウステンボスを外観のみ見学。一人3千円を越す入場料にただっ広い敷地・・・ディズニーランドみたいに(知らんけど)楽しそうなイベントもなさそうだし、なんでそんなに払ってこんなに歩かなきゃいかんの?って感じで・・・ありゃ、 このままでは再建は困難だろうな。

 で、昼ごろ長崎に到着。グラバー邸のある石畳を登り、大村天主堂を見学。キリシタン迫害の歴史やら、アウシュビッツでナチの犠牲になったコルベ神父やらを知る。想像や映画では簡単なことでも、実際その場の自分が同じことを出来るだろうか。ただ信仰心が厚いとかの問題だけではなさそうに思えてならない。清清しい気持ちになって食った角煮マンとその横に少しだけ写っている皿うどんは大して旨くも無かった。やっぱ、観光地の食い物屋で旨いところは少ないよな。しかしこういう時でもビールだけは美味いので、助かる。

 夜の雲仙。昔の有名観光地は今全体に寂れていますね。熱海だとか下呂だとか、昔その地の代表的な観光地の大旅館や大ホテルも団体客の減少、宿泊スタイルの変化についてゆくのが大変だろうと思う。今は、ずいぶん以前から我々もそうだが、宿泊はビジネスホテルで食事はその街をぶらついて店を探して旨い物を食う・・・温泉だってどこにでも日帰り入浴は出来る。こんなスタイルで旅をしたほうがある意味でその街を満喫できるのである。大旅館に入って仲居さんに気を使いながら食事もコース料理的なお仕着せの物を食わされるよりよほど良い。てんぷら等を温かいまま食わせてくれるようなところもあるようだが、一定限度の大きさになるとそれは不可能である。久しぶりに旅館に泊まり、その意を新たにした次第である。


 今日は昼に有明海を回り、ムツゴロウを食して帰る予定だった。悪名高い有明海の干拓事業は現在諫早市辺りがひどく、もう昔の干潟は埋め立てられて広大な草地と化している。スーパーの前に店を出していた靴屋のオヤジさんも、ムツゴロウの話を聞くと、「昔は一杯獲れたけどねぇ・・・」と遠い目を海岸線に向ける。雲仙から干拓用に出来た長い堤防を渡り、207号線を北上していくと多良を過ぎ、七浦辺りだったと思うが目の前に干潟が現れ、丁度そこに道の駅があったので車を止めて入る。

 目の前の干潟でムツゴロウ釣りをやっている。板の船に乗ってやるのかと思っていたが、胴長でやっている。少し見ていたが、へたくそなのか、さっぱり取れない(引っ掛けられない)。干潟に目をやると、なにやら黒いものが点々とうごめいている。おお、ムツゴロウだ!。生きたムツゴロウを見るのはもちろん初めてだ。

 時折こうやってヒレを立てて、飛び跳ねたり、2匹で喧嘩したりしている姿はなかなか愛嬌があって可愛い。小さい奴が堤防のすぐ近くまでやってきたのでソ〜ッと捕まえようとするが、逃げ足は速い。タモがあれば可能だが、大きい奴は絶対に近くには来ない。こんな場所では網も使えないから、結局は長い竿を使って錘のついた針を振って引っ掛ける漁法しか無いのである。延々と小一時間もムツゴロウを観察しながら遊んでもらっていたら・・・なんだか食べる気が失せてきた。しかし何もしないで帰るのもなんなので、売店で売っていたムツゴロウの素焼きの串を「食材試食家」の花山魚菜に送付し、味を見てもらうことにした。この試食家は魚類に限らず食えるものは何でも(昆虫でも爬虫類でも)口に入れて味を確かめるという習性を持つ変人で、訳の分からないものはとりあえず送っておくと後で味の詳細レポートをホームページや掲示板上で公開してくれるので大変便利なのである。そして自分たちが食うのはそれが美味かったというレポートの後でも、十分なのである。

食歩記Aに続く


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